2/17/2011

OST #4

最後に、生産工場です。
我々クルーズ社の多くの製品を代表吉岡と共に作り上げてきた工場の一つが長野県松本市にある飛鳥工場です。

30代前半という若き社長、八塚 悟氏の元で、若きスタッフが日々、世界に誇れる楽器制作に取り組んでいます。
「世界に」と言うと少々大袈裟に聞こえるかもしれませんが、実際に彼らの製作する楽器のクオリティーは世界中の生産工場で製作される楽器と比べても、かなりレベルの高い仕上りだと思います。

皆さんは工場生産品とビルダーメイドの楽器の違いをどうお考えでしょうか?

何となく「個人ビルダー物はライン生産品よりも良い」と考えている皆さんもいらっしゃるかもしれません。
確かに、流れ作業で製作される楽器には、その最終的な音のイメージや弾き心地への欲求が込められていない楽器も存在するかもしれません。

「ビルダー物」とは1人、もしくは少数の人間が、最終的な楽器の音色や弾き心地をイメージしながら作業を進める訳です。しかも、一日に1本楽器が仕上がる訳でもありません。1本のギターを製作するのに、ひと月掛かる事もあります。人件費を計算してもギターが高額になるのは当然の事です。

そして、ライン生産品とは複数の人間がそれぞれの行程/セクションに立ち、与えられた仕事をこなしてゆきます。
ボディー研磨のスタッフは研磨のみを行います。
ネック成形担当はネックの成形のみを行います。
塗装は勿論、塗装担当者が行います。

捉え方としては、個人ビルダー物は全ての行程を、制作者本人が責任もって行う事で、理想的な楽器に仕上がる、と言えるでしょう。

ではライン生産品はそうでないか?と言われれば、
そんな事はない、と我々は思います。

何故なら、ライン作業での担当者は1日中、その研磨の行程やネック成形の行程を行う訳です。
それも1日だけではありません。
毎日、毎月、毎年です。

そんな彼らが、その部所のプロフェッショナルになって行くのは自然に理解できるはずです。
勿論、手順が良くなっていくだけではありません。

1/1の個人ビルドではなく
各セクションの担当者が責任を持って自身の仕事を磨き上げる20/20や100/100の仕事です。

各セクションの担当者は
「こうしたら、どうなる」
という事を理解してゆきます。

ご存知の通り、どんな個人制作家もはじめからプロフェッショナルであった訳ではありません。
ここ飛鳥ファクトリーでも、未来の職人が日々成長しています。


ではそんな工場で良い楽器を作るにはどうしたら良いか?
何よりもその生産ラインを監修し、仕上りのイメージにフォーカスを当てた楽器制作を行う事が重要になります。

我々が考えるOSシリーズとは、どこまでハイクオリティーな楽器(精度だけでは無く、音と弾き心地)をどこまでコストを抑えて製作できるか、という楽器でした。
当然、飛鳥工場とも打ち合わせを続けます。


そして、代表吉岡の「出来るだけ価格を抑えた良い楽器の製作」というオーダーに悩んだ八塚社長の答えは「今まで通りに製作するしかない」という事でした。

八塚社長いわく、
「結局、手を抜く行程は存在しない。手を抜けば、完成形のバランスが崩れるので、組込みの前に必ず修正が必要になる。その労力を考えると、はじめからしっかり製作する他無い。
同じ様に材の質を落としたら、何年か経って、絶対に修理と修正の必要がある。それはすなわち、工場の格を落とす事になる。だからそんな物は作る事は出来ない」と八塚氏は言います。

「クルーズさんの名前を付けてそういう楽器を作ったら、吉岡さんは絶対嫌がるでしょう?(笑)。だから結局、手を抜くと自分達が大変になるんです。僕は後から修正する方がめんどくさいと思います。解るでしょう?(笑)」

つまり、ネックは粗加工~一度寝かせて休める~荒加工~休める~成形、という経過を経て完成します。
ボディーもNCルーターで年輪や木目を無視して、コンピュター制御で「決まり通り」に削り取られる訳では無く、人間の手で杢や木の節にそって成形されます。

ナットは成形された物をはめ込む訳では無く、1本1本楽器に合わせて削られます。

その結果、仕上がった楽器はハイクオリティなピックアップとパーツで手元の鳴りを誤摩化した様な物では無く、何年も弾き込む事で弾手と楽器が同じ様に成長できる楽器、すなわち我々が今まで製作してきた楽器と少しも変わらぬ物でした。



今回のOSシリーズは、押し付けがましいかもしれませんが、今までクルーズの楽器を愛用してきた皆さんへの感謝。
つまりご奉仕品です。そして、初めてクルーズの楽器を手にする皆さんへの招待状のようなものです。


是非、これからの楽器選びの基準となるギターを手にしてみて下さい。
倍以上の価格帯のギターと比べていただいても、少しも劣る事はないと思います。
むしろ、OSシリーズの持つ音色に驚かれるかもしれません

それは「工場生産=大量生産」というイメージを覆すことでしょう。
それこが、本当のMADE IN JAPANクオリティーです。


このOSシリーズは
全国のクルーズ製品取扱の楽器店様で入手可能となります。

是非一度、我々の自信作を店頭でお試し頂けたらと思います。

クルーズスタッフ 一同

2/11/2011

OSシリーズ#3


SAYTONEはまだまだ発展途上のピックアップではあります。
しかし、有名ブランドのピックアップは勿論、海外個人制作家のピックアップと比べても全く引けを取らないチューニングに仕上がっています。
しかも、ハンドワインディング・ピックアップならではのトーンの奥行き感やエイジングによる音の変化を持っています。

たとえヴィンテージのレシピを元に製作されたピックアップでも、機械巻きではこの音色は得られません。
これからの進化が期待できる素晴らしいピックアップになりました。

勿論、このサイトーンP.Uも決して手頃な値段ではありません。
一般的なリプレイスメント・ピックアップと比べれば、随分と高額なピックアップです。
しかし、その音色に対する金額としては、申し分無い価格に仕上がっています。


OSシリーズのパーツは国産のゴトーガットの製品をチョイスしています。
それはメイドインジャパンへのこだわり、というだけではありません。
世界中で「最高の品質」と認められるパーツをチョイスするとゴトーガットの製品になります。

海外有名ギタービルダーも、その品質には一目を置き、別注も多く手がけるブランドです。
さらに、国内で入手できるという点に置いても、USやドイツ製のパーツよりも価格は抑えられます。
つまり、我々がチョイスした理由は非常にシンプルです。

「安くて良い品」である。

他に理由が必要でしょうか?



最後に、生産工場です。
我々クルーズ社の多くの製品を代表吉岡と共に作り上げてきた工場の一つが長野県松本市にある飛鳥工場です。
30代前半の工場長兼社長の八塚悟氏の元で、若きスタッフが日々、世界に誇れる楽器制作に取り組んでいます。

皆さんは工場生産品とビルダーメイドの楽器の違いをどうお考えでしょうか?
何となく「個人ビルダー物はライン生産品よりも良い」と考えている皆さんもいらっしゃるかもしれません。

確かに、流れ作業で製作される楽器には、その最終的な音のイメージや弾き心地への欲求が込められていない楽器も存在するかもしれません。そして、ビルダー物の楽器の価格はとても高額です。

ビルダー物とは1人、もしくは少数の人間が、最終的な楽器の音色や弾き心地をイメージしながら作業を進める訳です。しかも、一日に1本楽器が仕上がる訳でもありません。1本のギターを製作するのに、ひと月掛かる事もあります。人件費を計算してもギターが高額になるのは当然の事です。


ライン生産品とは複数の人間が各セクションに立ち、与えられた仕事をこなしてゆきます。
ボディー研磨のスタッフは研磨のみを行います。
ネック成形担当はネックの成形のみを行います。
塗装は勿論、塗装担当者が行います。

捉え方としては、個人ビルダー物は全ての行程を、制作者本人が責任もって行う事で、理想的な楽器に仕上がる、と言えるでしょう。
ではライン生産品はそうでないか?と言われれば、そんな事はない、と思います。

何故なら、ライン作業での担当者は1日中、その研磨の行程やネック成形の行程を行う訳です。
それも1日だけではありません。毎日、毎月、毎年です。そんな彼らが、その部所のプロフェッショナルになって行くのは自然に理解できるはずです。勿論、手順が良くなっていくだけではありません。
「こうしたら、どうなる」という事を理解してゆきます。どんな個人制作家も、はじめからプロフェッショナルであった訳ではありません。

後はその生産ラインを監修し、仕上りのイメージにフォーカスを当てた楽器制作を行う事が重要になります。

続く

2/10/2011

OSシリーズ#2

そして、我々がこのギターに搭載するピックアップの候補に選んだのがサイトーンピックアップです。
サイトーンピックアップは、国内の有名ヴィンテージショップをはじめ、多くの有名店からもその腕を見込まれ、楽器修理を頼まれるSGK/齋藤楽器工房の代表者、斉藤氏の製作するピックアップです。

斉藤氏はヴィンテージピックアップの巻き直しや修繕を長年行ってきたなかで、ピックアップ製作のノウハウは習得していましたが「トーンを作り上げる」という行程においては「目前に靄がかかっていた」のだと言います。ここに、マテリアルや巻数、直流抵抗値では理解できない「音を作るノウハウ」があるからです。

斉藤氏自らもいくつものヴィンテージピックアップを巻き直してきて、ヴィンテージピックアップを巻き直す時と、自らがゼロからピックアップを巻き直す時とでは、その音色が違うと言う事には勿論気づいていたからです。しかし、具体的な製作行程における違いを確信してはいませんでした。
しかし、「あるピックアップ」に出会ったことで斉藤氏は、自らが半場諦めかけていたピックアップ製作に取り組みます。

斉藤氏は過去の文献や自らの経験、そしてヴィンテージのピックアップをもう一度見直し、自分が思うピックアップのレシピに標準を合わせてゆきます。

そして十数年以来の交流がある
弊社代表 吉岡とのディスカッションや
我々クルーズスタッフやミュージシャンとのサウンドチェックの中で、その音色は徐々に磨き上げられてゆきます。

そして、ライブやレコーディング現場でのチェックは、一人部屋で好き勝手に弾いているギターの印象とは大分異なるからです。プロのチェックが必要な理由はここにあります。

そうして完成したSAYTONEピックアップのファーストモデルである"GROWL"は、60年代のシングルコイルを十分に再現しながら、近代的なアンプや周辺機器とのマッチングを成功させていました。初期モデルからの進化に我々も驚きました。確実に「音色」を掴んでいます。

こうして、SAYTONEピックアップはこのプロジェクトの重要な要素の一つになります。

続く

2/09/2011

OSシリーズ 登場

前回のエントリでお話しした、2011年のニューラインをご紹介します。
その名をOSシリーズと言います。

OSとはこちらも前回のエントリで記載した「こちら側に来ていただきたい」の意味を込めてOur Sideという言葉のイニシャルを略したものです。

楽器の善し悪しとは一体どこで決まるのか?
材でしょうか?ハードウエアパーツでしょうか?ピックアップでしょうか?コンデンサーでしょうか?ジャックでしょうか?組込みでしょうか?

この様なディスカッションは日々、世界中で行われています。
ではヴィンテージスタイルとモダンスタイルで何が違うのか?
ネックのグリップで何が変わるのか?ボディーのサイズとマテリアルで何が変わるのか?

100の言葉より、一つの楽器でそれを提示してみましょう、と言うプロジェクトがこのOSシリーズです。
こちら側(Our Side)に来てもらい、それを体験していただいた方が何倍も解りやすいと思うからです。


以下がファーストモデル、OST-60の詳細です。

指板:マダガスカルローズウッド(スラブ張り)
ネック:メイプル
ボディー:2ピースアルダー
フィニッシュ:クラウディーラッカーフィニッシュ
ピックアップ:SAYTONE ハンドワインディング モデル
ハードウェアー:ゴトー製
アッセンブリー:国産ポット他
ハードケース附属

この様な仕様は、様々なブランドからも発売されている最もポピュラーな仕様です。
勿論、こだわりのポイントは外せません。マダガスカルローズウッド指板はこのクラスでは殆ど採用されていません。
そして心臓部のピックアップにはハンドワインディング/サイトーンのピックアップを搭載しています。

皆さんのスタートに相応しいモデルになる様に、一切の手抜きはありません。1本あたりの利益は通常モデルに比べて大きく減ります。
しかしこのギター、このシリーズを手にした皆さんが「トーン」に関してもっと興味と可能性を見言い出していただければ、このプロジェクトは意味があるものになります。弾いた瞬間に解る、同価格帯の楽器とは明らかに異なる音色と弾き心地を持っているはずです。そして、次に手にするギターを選ぶとき、皆さんは決定的な「楽器を見る目」を持っているはずです。

続く

2/03/2011

2011 ニューラインナップ

近日、実際に商品の出荷を開始いたしますが今年2011年、かなり思い切ったニューラインナップを市場に投下いたします。
昨年までは「ヴィンテージライン」というカテゴリーで発表してきたワンピースボディー/プレミアム・ブラジリアンローズといったマテリアルを惜しみなく使用し、我々の考える「昔ながらの製法で製作した基本となる楽器」。

おかげさまで多くの皆様に手に取っていただき、実際にご購入頂いております。本当に我々も驚く程でした。
勿論、貴重なブラジリアンや、規定数を揃えるにも時間を労するワンピースボディー、なおかつ軽量感や鳴りと言う部分でも「ワンピースであれば何でも良い」というワケには行きません。
ファクトリースタッフや我々自身で材を選定し、エアドライシーズニングさせた木材は、正直に言うとあの価格帯では販売できないクラスのものです。
しかし、オリジナルヴィンテージをお持ちの皆様にも納得していただける事。

そしてこれから2本目3本目という楽器を探している皆さんにとって長く付合える最上の国産ギターを手にして欲しい、という願いからこのシリーズはスタートしました。
また、一部のモデルには同じく国産の最上級ピックアップ、いや世界的にもあのレベルのピックアップは存在しないと思われる程、製法だけでなく音にこだわって製作されるK&Tピックアップとのコラボレーション・モデルを発表いたしました。

そして今年、もっと多くの皆さんにも、「こちら側の世界」を体験していただきたく、新しいラインナップを加えます。
2ピースボディー、マダガスカルローズを基本スペックに設定。
様々なパーツやピックアップを搭載させたモデルを展開いたします。

まずはおなじみのスラブボード指板にアルダーボディーのSTスタイルから。続いてスタンダードモデルが続きます。
勿論、単なるコストパフォーマンスモデル、と言う訳ではありません。
今更我々がそういった楽器を製作しても、皆さんには納得していただけないでしょう。
勿論、我々もやる意味がありません。

結局、飛鳥ファクトリーの八塚社長及びスタッフの皆さんと密にコンタクトを取りあい、無理を聞いていただいた事で、価格をはるかに上回る、驚くべきクオリティーを持ったギターが完成しました。

続く